脂質とダイエットの関係:脂肪酸や不飽和脂肪酸・トランス脂肪酸まで

2018年6月1日

「脂質」、「油」と聞くと思い浮かぶのは『脂肪が体につきやすい』と思う方も多いのではないでしょうか?

当サイトでは『ダイエットのコツ』や『エクササイズ方法』について記事を公開してきました。

現在では400を超える記事があるのですが、そのうちの8~9割はエクササイズのやり方やその効果についての記事でした。

コメントを頂いた方へのお返事や一部の記事では、ダイエットに大切なことの一つとして食事の大切さを記載していましたが全体の割合としては少ないのが現状でした。

今後は少しずつダイエットと関わりの強い栄養素や食事の方法についてもコラム形式でご紹介していきたいと思います。

今回は三大栄養素の1つ、脂質とダイエットの関係についてご紹介します。

脂質とは?

まず最初に脂質についてご紹介します。

脂質(ししつ、Lipid)は、生物から単離される水に溶けない物質を総称したものである。
1.水に不溶、ただしエーテル、ベンゼンなど有機溶媒に溶ける
2.加水分解により脂肪酸を遊離する
3.生物体により利用される
ただし、上記の定義は現在では数多くの例外が存在し、十分な条件とは言えない。現在の生化学的定義では「長鎖脂肪酸あるいは炭化水素鎖を持つ生物体内に存在あるいは生物由来の分子」となる。

引用:Wikipedia

科学的な定義ですのでわかりづらいですよね…。

一般的には「水に溶けず、生物が利用する物質」とされています。

脂質は三大栄養素(五大栄養素とも)の一つで、人間が生きていくために必須の栄養素です。

前置きでも書きましたが、脂質や油と聞くと体の脂肪になりやすいイメージを持ち、毛嫌いをしている方も多いのではないでしょうか?

そんな脂質の体内での働きまず把握してみましょう!

脂質の体での働き
  • 細胞膜の構成成分
  • エネルギー源となる
  • 体温を保つ
  • 皮膚を丈夫にする
  • ビタミンの吸収を助ける
参考:平成22年9月 消費者庁食品表示課 脂質と脂肪酸のはなし(www.caa.go.jp/foods/pdf/100910_3.pdf)

この他にも脂質は体に必要な働きを助ける重要な栄養素です。

脂質が欠乏すると起こる体への影響
  • お肌が弱くなる
  • 血管が弱くなる
  • 体力の低下

お肌にツヤがなくなり、髪のツヤなどにも影響します。油抜きダイエットなどではお肌か髪のツヤが失われ、体力が低下してしまう可能性が高く、痩せることに成功したとしても健康を維持しにくい可能性が高くなります。

以上から単純に脂質や脂分を減らしたからといって健康的なダイエットは実践できません。

脂質のカロリー

1gあたり約9kcalのエネルギーとなります。

その他の三大栄養素のタンパク質と炭水化物が1gあたり約4kcalのエネルギーとされることから倍以上脂肪になりやすいと捉えることができます。

厳密には同じカロリーでも『脂肪になりやすい食品・なりにくい食品』などありますが、バランスのよい食事を心がけていれば極端に油を避けたり、お肉を避ける必要はありません。
(もちろん、ボディビルダーの方など、競技などの目的がある方はこの限りではありません)

成人で1日に必要なエネルギーの20~25%ほどを脂質からとるのがよいといわれています。

引用:江崎グリコ 栄養成分ナビ(www.glico.co.jp/navi/dic/dic_03.html)

先ほどの『脂質の体内での働き』にも記載しましたが、体に必要な栄養素ですので全く取らない、過度に制限をした食生活を送ることは『健康的な食生活』とは言えません。

最近では雑誌のダイエット特集などを見ても【単品ダイエット】、【断食ダイエット】、【油抜きダイエット】という内容は減ってきて、【正しい食生活】と【定期的な運動】で痩せようという内容が増えてきているように感じます。

一昔前に単品ダイエット、りんごダイエットなどのメディアで取り上げられたダイエット方法は数日間その食材だけを食べたり、全く食事を取らない手法などがありました。

そのような影響で【食べない=ダイエット】と考えている方も多いように感じます。

断食ダイエットはもちろんですが、単品ダイエットの多くは栄養素に偏りが出ます。

例えば「りんご」で考えるとビタミン・ミネラル・炭水化物は豊富ですが、「脂質とたんばく質」がほとんど含まれていません。

ダイエットの基本

1:五大栄養素をバランスよく食べながら、食生活の見直す。
2:運動も心がける

結論は皆さんも意識したり、当然と思っていることだと思います。

脂質のカロリーはその他の三大栄養素と比較して倍以上のカロリーがあることから、炒めもので油をたくさん使ったり、炒めものや揚げ物の比率が高い中華料理を毎日食べていては当然カロリーオーバーにつながります。

脂質を毛嫌いするのではなく、揚げ物を避けたり、炒めものの油を減らすなどの工夫をすることを心がけることが大切です。

脂質の分類

以前の記事では「脂質は必要」というような内容の記事でした。

そして脂質の定義は「水に溶けず、生物が利用する物質」とされています。

非常にざっくりとした定義ですよね…。

生化学的な分類では単純脂質、複合脂質、誘導脂質の3種類に分けられ、更に細かい分類がされています。

科学的な分類を上げますとキリがないですし、本題からそれてしまいます。

本記事では脂質をダイエットや健康面と関わりのある分類を中心にご紹介します。

脂質の分類
  • 脂肪酸
  • 中性脂肪
  • コレステロール
  • ステロイド
  • リン脂質
まずはこの中の『脂肪酸』にスポットを当てた解説をします。

脂肪酸にも沢山の種類があり、その中には人体に必須とされる成分もあります。

その必須の脂肪酸に該当する成分は『人体に必須とされる』、『人体で作り出せない』などの理由から『食品などから摂取する必要がある』成分です。

脂肪酸とは?脂肪酸の分類

脂肪酸は脂質の構成要素ですが、この脂肪酸も数十種類の分類が出来ます。

大きく分けると以下の様な分類ができます。

脂肪酸の分類ー飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸について

脂肪酸は大きく分けると「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類できます。

飽和脂肪酸は常温で個体、不飽和脂肪酸は常温で液体の事が多いです。

一般的に飽和脂肪酸は動物性、不飽和脂肪酸は植物性の傾向があります。

「不飽和脂肪酸」は更に「一価(二重結合がひとつ)」と「多価(二重結合が2つ以上)」に分類できます。

飽和脂肪酸は動物性で過剰摂取は動脈硬化の原因ともなります。

以前の記事で『脂質を取ることは健康的な体を維持するためにも必須』と書きました。

とは言え、油そのものにカロリーがありますので、「健康によい=いくらでも食べていい」は間違いですし、過剰摂取は肥満などの元になります。

特定の脂肪酸に偏った食生活を意識するのではなく、全体的な量の調整や日々のバランスを調整することが大切です。

テレビや雑誌・その他インターネット上のメディアでは「〇〇が健康にいい!」、「〇〇を食べれば痩せる」という表現をよく見かけます。

様々な理由からセンセーショナルでキャッチーな見出しやタイトルというのは「ユーザーさんに見てもらうため」に必要な場合もあるのかもしれません。

確かに一つの見方からすれば体へいい働きをすることもあるのかもしれません。

ですがその食品や食材だけを食べていては体への悪影響があります。

バランスのとれた食生活や運動習慣がダイエットや健康維持の為には必須です。

飽和脂肪酸とは?

飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は炭素の二重結合がないものを指します。

<飽和脂肪酸の特徴>
主に動物性(牛脂・ラードやバター、ヤシ油、ココナッツオイルなど)
常温で固体

<飽和脂肪酸の過剰摂取によるリスク>
・中性脂肪を増やす
・コレステロールが増える
・肥満につながる
・動脈硬化

不飽和脂肪酸とは?

不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は構造上、1つ以上の炭素原子の二重結合のあるものを指します。

<不飽和脂肪酸の特徴>
主に植物性
常温で液体

<不飽和脂肪酸の過剰摂取によるリスク>
・肥満につながる
・動脈硬化
・アレルギー症状の悪化

不飽和脂肪酸を更に分類すると

一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分類できます。
一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸はオリーブオイルなどに含まれるオレイン酸が代表的な脂肪酸です。
一価不飽和脂肪酸に該当するオリーブオイル
飽和脂肪酸と比較し、悪玉コレステロールを減らし、血中のコレステロールを減少させる働きがあります。

酸化されにくい油です。

代表的な一価不飽和脂肪酸

オリーブオイル
べに花油

多価不飽和脂肪酸

多価脂肪酸は「n-3系不飽和脂肪酸」と「n-6系不飽和脂肪酸」に分類できます。
多価不飽和脂肪酸
このn-3とn-6はω-3やω-6とも表記され、炭素の二重結合のある場所を指しています。

多価不飽和脂肪酸は最も酸化しやすい特徴があります。

n-3(ω-3)系不飽和脂肪酸のはたらき

魚に多く含まれるDHAやEPA、エゴマ油、シソ油、亜麻仁油などが該当します。

血中の中性脂肪を減少させ、悪玉コレステロールを減らす働きや抗炎症作用などがあります。

特にDHA(ドコサヘキサエン酸)は老人性痴呆の予防や学習機能の向上などの効果があるとされています。

n-3(ω-3)系不飽和脂肪酸を多く含む食材

まぐろやぶり、イワシ、サバ、サンマ、エゴマ油、じゃがいも、だいず

n-6(ω-6)系不飽和脂肪酸

サフラワー油(ベニバナ油)、ひまわり油やコーン油、卵黄などに多く含まれ、血中のコレステロールを低下させる働きがあります。

その中でも特徴的な脂肪酸

リノール酸とαリノレン酸を含む食品
ω6系脂肪酸とω3系脂肪酸の代表的な多価不飽和脂肪酸の中でも図中のリノール酸とαリノレン酸があります。

リノール酸はコレステロール値を下げる働きがあるとされていましたが、近年の研究ではその効果は短期間のもので、長期間多く摂る事で、ガンや脳梗塞、心筋梗塞、アレルギー体質の引き金になるというデータが出ています。

総脂肪摂取量のうち、αリノレン酸の量を意識的に増やすことが健康維持には大切と考えられます。
(リノール酸も必須脂肪酸ですのでゼロにすればいいという訳ではありません。)

参考: 京都府消費生活安全センター くらしの情報ひろば リノール酸の摂り過ぎはよくないといわれるが本当か(www.pref.kyoto.jp/shohise/15400090.html)

油の種類による飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率

ヒトコトに〇〇油と表記があっても特定の脂肪酸だけを含んでいる訳ではありません。

引用元の画像を参考に見てみましょう。

不飽和脂肪酸の比率
画像引用:わんぱくランチ 「不飽和脂肪酸」ってなに?

一価不飽和脂肪酸を多く含む代表的な油のオリーブオイルでも、15%の飽和脂肪酸、10%の多価不飽和脂肪酸を含みます。

オリーブオイルや健康によいとされている商品を購入したからといって、いつもよりも多く使っていては体への影響があります。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランス

日本人は欧米人と比較して不飽和脂肪酸を多く食べている傾向があります。

この差には文化的な背景が考えられます。

飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の比率が3 :4 : 3であることが望ましいとされています。欧米では一般に飽和脂肪酸が多く、多価不飽和脂肪酸が少な過ぎるとされますが、日本人の食事は平均すると理想に近い脂肪酸バランスといわれています。

参考・引用:公益財団法人 日本食肉消費総合センター 「SMP比」って何のこと?(www.jmi.or.jp/qanda/bunrui3/q_056.html)

飽和脂肪酸:Saturated fatty acid
一価不飽和脂肪酸:Monounsaturated fatty acid
多価不飽和脂肪酸:Poly un-saturated fatty acid

この頭文字からSMP比と呼ばれています。

近年はファーストフードなど、食の欧米化が進んでいるため、そのバランスが崩れつつあります。

例えば牛サーロインなどは100gあたり、約16gの飽和脂肪酸が含まれています。
参考:飽和脂肪酸の多い食品と、飽和脂肪酸の含有量一覧表(www.eiyoukeisan.com/calorie/nut_list/fatty_acid.html)

お肉をメインとした食生活ではこのSMP比のバランスが崩れやすくなると考えられます。

魚や野菜を中心とした食生活を心がけることでこのバランスの維持がしやすくなります。

ダイエットと脂肪酸(脂質)の関係

本記事では不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸についてを掘り下げて解説しました。

日本人は脂質を1日に50g前後摂取し、そのうち食用油からの脂肪摂取量は十数グラムです。

残りの30g以上は魚や米などその他の食材からとっています。

脂質ダイエットで大切なポイント

  • 調理用の油の種類には少しこだわった方が良い
  • それ以上に食べる食材に注意が必要
  • 食事は魚を中心を意識したほうがベター

現段階で健康によいとされているαリノレン酸を豊富に含むエゴマ油などは一般的に売られているサラダ油などと比較すると10倍ほどのお値段がすることも…。

調理用油のすべてを変更するのは難しいのではないでしょうか。

調理油にばかり注意を払うのではなく、脂質の取り方、食べる食材選びにも注意をしましょう。

脂質の中でも特に皆さん気になるのが最近特に話題になるマーガリンなどの脂質成分であるトランス脂肪酸。

その危険性や問題などについて一度は耳にしたことのある方が多いのではないでしょうか?

トランス脂肪酸とは?

トランス脂肪酸は天然の素材にも存在し、牛乳や加工品のバターなどにも少量含まれています。

表示義務のある国でも天然のトランス脂肪酸については規制の対象外とされています。

トランス脂肪酸の分類

トランス脂肪酸を含む油脂は常温でも液化しづらく、酸化による劣化が少ないため、食品を長持ちさせるために利用されてきました。

また、揚げ物(フライドポテトなど)をサクッと仕上げる目的や洋菓子の食感をよくする目的でも使われています。

元来酸化しやすい不飽和脂肪酸に水素添加を行うことで飽和脂肪酸と同じような構造にします。

この過程で二重結合の一部がシス型からトランス型へと立体構造に変化が出ます。

トランス脂肪酸の危険性

トランス脂肪酸を一定量摂取することで悪玉コレステロール(LDL)を増やし、善玉コレステロール(HDL)を減らす事が分かっています。

その他に、トランス脂肪酸の過剰摂取が引き起こす可能性が高いとされているのが以下の症状です。

トランス脂肪酸の影響
  • 糖尿病
  • 心疾患
  • 肥満
  • 高血圧
  • 高血糖
同様の症状はその他の脂肪酸の摂取でも起こります。

ではどの程度トランス脂肪酸の体への影響があるのでしょうか?

1994年の論文を解説しているサイトから引用させていただきます。

飽和脂肪酸と同量のトランス脂肪酸を摂った場合にはLDL/HDL比の上昇させる程度は飽和脂肪酸に比べると2倍程度高いという結果がでたのです。

LDLは全身の必要な場所にコレステロールを運ぶ役割を、HDLには全身から余分なコレステロールを引き抜き肝臓に戻す役割がある、と簡単におぼえておくと良いでしょう。

引用:トランス脂肪酸ってどれぐらい危険なの(データ検証編)(d.hatena.ne.jp/doramao/20140210/1392010030)

引用元記事の参照論文:rans fatty acids and coronary heart disease. Ascherio A, Katan MB, Zock PL, Stampfer MJ, Willett WC. N Engl J Med. 1999 Jun 24;340(25):1994-8.

簡単にまとめるとトランス脂肪酸は同じ量の飽和脂肪酸を摂取した際と比較して、善玉コレステロールの働きを抑え、悪玉コレステロールの働きを2倍活発にする可能性が示唆されています。

また研究論文の多くが、欧米人を対象とした調査で日本人におけるリスクの増大については明らかになっていません。

トランス脂肪酸を多く含む食べ物

トランス脂肪酸を多く含む食品
図のようにマーガリン以外にもケーキやビスケットなどの洋菓子もトランス脂肪酸が多く含まれれる食品です。

<ショートニング>

  • ケーキ
  • アイスクリーム
  • 菓子パン
  • クッキー
  • ポテトチップス
  • チョコレート
  • フライドポテト

<食用油>

  • マーガリン
  • サラダ油
  • コーン油
  • 植物性油脂

<インスタント食品>

  • カップラーメン
  • カレールウ

<その他>

  • マヨネーズ
  • オイルドレッシング
  • 揚げ物全般

日本人は元々トランス脂肪酸の摂取量が少ない??

ここまではトランス脂肪酸のリスクや多く含まれる食品についてご紹介しました。

トランス脂肪酸を摂取することは同量のその他の脂肪酸を摂取するよりも生活習慣病のリスクを高めることが示唆されています。

本章では日本の対応、次の章で各国の対応の比較をしてみましょう。

現状、日本ではトランス脂肪酸の使用禁止、含有量の表示義務などはありません。

◆日本人の平均的なトランス脂肪酸の摂取量

日本人一日当たりのトランス脂肪酸摂取量を推計(積み上げ方式)したところ、平均 0.7g(摂取エネルギー換算では約 0.3%)

平成 20 年度の食用加工油脂の国内の生産量から推計した一日当たりの
トランス脂肪酸摂取量は、平均 1.4g(同約 0.7%)

引用:食品安全委員会

調査結果は日本人が何を食べているかの平均値から計算した結果と流通する食用油の生産量から推計した摂取量です。

調査結果には年度によってもばらつきがあるものの総摂取エネルギー量の1%未満という結果がでています。

これらの結果はあくまで平均値ですので、1日の摂取量は個人の食生活に応じて差があるはずです。

外食中心やスナック菓子などを中心とした食生活ですと、どうしてもトランス脂肪酸の摂取量は増えがちですし、表示義務が無いため、知らぬ間に平均値を大きく超えて摂取している可能性が高いと言えます。

トランス脂肪酸に対する各国の規制対応

ではトランス脂肪酸に対する表示義務の有無について各国の対応からご紹介します。

<トランス脂肪酸 栄養成分表示義務のある国
アメリカ
カナダ
韓国
南米
香港
台湾

<トランス脂肪酸 栄養成分表示義務のない国
日本
中国
EU各国
オーストラリア
ニュージーランド
フィリピン
シンガポール
タイ

参考:平成22年 消費者庁食品表示課 栄養成分及びトランス脂肪酸の表示規制をめぐる国際的な動向(www.caa.go.jp/foods/pdf/100910_2.pdf)

アメリカでは段階的に使用を禁止する流れ、スイスやデンマーク・オーストリアでは脂質中のトランス脂肪酸を2%以下に制限をしています。

ドイツでも摂取する食物エネルギーの1%以下に抑えるべきで、ドイツのほとんどの消費者は1%未満であったとしています。
(食物エネルギーの1~2%であった消費者は全体の10%以下だったとのことです)

参考:食品安全委員会ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)、ドイツではトランス脂肪酸の摂取による健康影響はないとの意見書を公表

各国の対応もアメリカの例を除くと、表示義務があるところまでで、実際の使用の禁止に至っている国は無さそうです。

先ほどの、飽和脂肪酸と同じ量のトランス脂肪酸を取った場合、2倍程度の健康への影響があるとされている研究結果からも、トランス脂肪酸の過剰摂取はその他の油よりもリスクが高いことは間違いありません。

ですが各国の対応の中でも一番過剰な反応をしているアメリカであっても、現状は規制に至っていません。

その他の国でも具体的な規制にまで至っている国はありませんでした。

各国とも身体への影響を認識した上で、流通量や配合量を減らす努力を企業に求めていると言えます。

研究や認知が進むにつれ、過度な摂取でなければ健康への影響がそこまで大きくないという判断がされつつあるように感じます。

日本は確かにトランス脂肪酸に対する成分表示の義務はありません。

日本でも大手の企業はトランス脂肪酸の量を独自に公表している会社もあります。

大手企業と政府の陰謀論でトランス脂肪酸の表示義務化が行われていない、というのは少し考え過ぎのようにも感じます。
(逆に現状では表示義務ができると対応に追われるのは中小企業では?)

マーガリンはプラスチック?

「マーガリンはプラスチック!」
「だから食べるべき物ではない!」
という扇情的な強い表現をするサイトなどをよく見かけます。

先ほどの陰謀論とも近しい印象を受けます。

本当にマーガリンはプラスチックなのでしょうか?

化学的な知識のある方が、プラスチック(plastic)の単語が意味する定義から分子構造の違いなどを解説しています。

その方の記事の一部を引用させていただきます。

・脂肪酸とプラスチックは大きさが比較にならないし、カルボキシル基の有無という点で全く違う。

・融点の差は分子の大きさと形状の違いによる差。プラスチック類>>飽和脂肪酸>トランス型脂肪酸>(常温固体の壁)>シス型脂肪酸。

・脂肪酸は塑性を持つが熱可塑性は持たない。プラスチックは熱可塑性を持つ。

・マーガリンは不飽和脂肪酸に水素添加して飽和脂肪酸にすることで融点を上げて個体にしている。

引用:素人以上専門家未満の管理人が書く科学ブログ。いろいろな内容をつらつらと。日記も少々。質問・突っ込み・コメント大歓迎 トランス脂肪酸はプラスチックに全く似てないよ (マーガリン=プラスチック説の否定)(flatfisher.blog68.fc2.com/blog-entry-302.html)

マーガリン=プラスチックと表現するのは誤解を招く、もしくは誤解をさせる事を前提に扇情的な表現をあえて使っているとも言えるのではないでしょうか。

また、最近のマーガリンのトランス脂肪酸の分量は減っていることから絶対に口にしてはいけない食品とは言いがたいと考えられます。

世界各国の対応、そして健康へのリスク、化学的な視点からプラスチックとの違いなどを加味しますとトランス脂肪酸との付き合い方は以下の様な結論となります。

<結論>
1:トランス脂肪酸の過剰摂取は心疾患や肥満などのリスクを上げる可能性が非常に高い
2:マーガリンや食用油などのトランス脂肪酸の含有量は減ってきている
3:トランス脂肪酸を含まない(少ない)脂質でも過剰摂取は禁物
4:可能な範囲でトランス脂肪酸を減らす努力は大切

*過度な拒絶をするほどまでではないと現状判断できるのではないでしょうか。
*そもそもの脂質自体、過剰摂取は動脈硬化や心筋梗塞などのリスクを高めます。

◆最後に
専門家やお医者さんの中にも扇情的な文言を使い、商売につなげている人もいます。
(例:週刊誌がひどい blogos.com/outline/97938/)

国家機関であっても企業との利害関係や判断を誤ることもあります。
(例:水俣病、薬害エイズなど)

科学も万全ではなく、正しいとされたことがいつの日か覆ることは往々にしてあります。

例示したものとは比較にはなりませんが、【健康】や【ダイエット】というキーワードも同じく色々な立場の方が、色々な意見をいいます。

一つの意見に流され過ぎず、冷静に複数の情報を照らし合わせて判断することが、情報があふれる現代を生きる私達にとって大切なのではないでしょうか。

ココナッツオイルは飽和脂肪酸の比率が高い

ココナッツオイルのダイエット効果とは?
巷で話題のココナッツオイルのダイエット効果や効能をご紹介します。

ハリウッドセレブの「ミランダ・カー」や「アンジェリナ・ジョリー」などが美容と健康のために直接飲むなどで話題になりました。

そんなココナッツオイルの特徴や体への効能、ダイエット目的の方は少し注意が必要ですので気に留めておいて欲しい点などを詳しく解説します。

01 1

脂質は大きく分けると飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けることが出来ます。

飽和脂肪酸のほとんどが乳製品や動物性の油です。

不飽和脂肪酸はサラダ油など植物性の油が多いです。

歴史的に動物性の油(飽和脂肪酸)が動脈硬化や肥満体質の原因とされ、サラダ油などの植物性の油がもてはやされました。

近年の研究では不飽和脂肪酸の中でもトランス脂肪酸の体への影響や肥満への影響が取り沙汰されました。
また、最近ではトランス脂肪酸(一部の不飽和脂肪酸)を取り除くために、メーカーは様々な努力を行いその比率を国際基準まで落とす努力をしています。

その結果、飽和脂肪酸の配合率が増えている傾向があります。

ココナッツオイルに話を戻しますと、以前もご紹介させていただいた他サイトさんの表を見るとその他の油と比較して非常に高い飽和脂肪酸の比率です。

不飽和脂肪酸の比率

画像引用:わんぱくランチ 「不飽和脂肪酸」ってなに?

「飽和脂肪酸」ですので脂肪がつきやすいのでは?と思う方も多いのではないでしょうか?

次の章をご覧ください。

ココナッツオイルは中鎖脂肪酸が多いので脂肪になりにくい

当サイトの過去記事でもご紹介しましたが、飽和脂肪酸は短鎖・中鎖・長鎖脂肪酸に分けることが出来ます。

牛乳なども飽和脂肪酸が多く含まれますが、短鎖・中鎖の脂肪酸が多く含まれます。

ココナッツオイルは中鎖脂肪酸が多く含まれています。
中鎖脂肪酸が脂肪になりにくい理由

中鎖脂肪酸は体内で素早く吸収され、エネルギーとして活用されやすい種類の脂肪酸です。

※エネルギーとして消費されやすいとはいえ、その他のカロリー摂取が多すぎる場合はいずれ脂肪になったり、その他の摂取カロリーが脂肪として溜めこまれやすくなります。

ダイエットとの関わりは最後にご紹介しますので最後までごらん頂ければと思います。

ココナッツオイルの効果・効能

  • 細胞膜の強化(血管や皮膚を強くする)
  • コレステロールを抑える(善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす)
  • 便秘の改善
  • お肌荒れの改善

その他にもアルツハイマーの予防や免疫力の向上、アトピーの改善などの効果や効能を示す研究論文が発表されています。

ダイエット中の方へ:ココナッツオイルの注意点

中鎖脂肪酸の摂取量を増やすことで脂肪の蓄積量が減ったとされる研究結果もあります。Value of VLCD supplementation with medium chain triglycerides.

*条件は1日の摂取カロリーも抑えています。

ダイエット中の方や肥満が気になる方に特に注意していただきたい点があります。

美容や健康によいとされているココナッツオイルや中鎖脂肪酸を含む油ですが、そのカロリーはその他の油と殆ど変わりがありません。

1gあたり約9kcalです。

直接飲んで100gを摂ることは無いと思いますが、100gで900kcalです。

先ほどの解説でも中鎖脂肪酸が「体内で優先的に消費されやすい油」とご紹介しましたが、そのそものカロリー摂取量がオーバーしていれば結局のところ何らかのカロリーが脂肪へと溜めこまれます。

ハリウッドセレブの情報などを元におすすめの摂取量を紹介している他サイトなどですと「1日に5gを3~4回直接飲もう」と言った表記も見かけました。

仮に1日に20g摂取したとすると約180kcalとなります。

特に注意したい点が健康のためのサプリのように20gを飲んでしまうと、単純に考えますと1ヶ月で約1kgほどの脂肪が増える計算になります。
(オイルを飲む以外の食生活も変えない、運動量も従来通りとした場合)

過度な期待を持ち過ぎることは逆の結果に繋がる可能性もあります。

例えば『炒めものに使っていたサラダ油をココナッツオイルに置き換える』と言った使い方であれば中鎖脂肪酸の比率が上がり、体への脂肪がつきにくくなる可能性が高いと言えます。
(価格や風味・用途を考えるとすべての油をココナッツオイルに変更するのは難しいとも感じます。)

最後に以前もご紹介したSMP比についてご紹介します。

飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の比率が3 :4 : 3であることが望ましいとされています。欧米では一般に飽和脂肪酸が多く、多価不飽和脂肪酸が少な過ぎるとされますが、日本人の食事は平均すると理想に近い脂肪酸バランスといわれています。

参考・引用:公益財団法人 日本食肉消費総合センター 「SMP比」って何のこと?(www.jmi.or.jp/qanda/bunrui3/q_056.html)

今回の記事はココナッツオイルにスポットをあてた内容で、その成分の9割が飽和脂肪酸でした。

健康維持のためにはバランスのとれた油の取り方にも意識を向ける必要があります。

一般的な食生活をしている場合は飽和脂肪酸(お肉などから)を多くとっている方のほうが多いと思います。

意識的に魚などから摂れる不飽和脂肪酸を摂ることでSMP比のバランスが取りやすいです。

ご自身の食生活に合わせた油の選択や食材の選択を行うことが健康維持やダイエットに大切です。

<まとめ>
ココナッツオイルは美容や健康に効果的。
従来の油の置換えとして使うのであれば脂肪の減少効果も期待できる。
過剰摂取は体脂肪を増やしてしまう可能性が高い。

オリーブオイルが健康に良い訳

健康によくて積極的に取りたいと言われる『オリーブオイル』の体へのいい影響やダイエットとの関係をご紹介します!
オリーブオイルの健康効果とは?
速水もこみちさんの料理番組コーナーのMOCO’Sキッチンは『追いオリーブオイル』が特徴的ですよね。

熱で飛んでしまったオリーブオイルの香りを引き立たせるため、調理後にオリーブオイルを追加するのが特徴ですね!!
オリーブオイルは健康によくて太りにくい油ですので積極的に摂りたいところですが、ダイエット中の方は注意が必要です。

オリーブオイルはその名の通り、オリーブの果実より抽出される油で、スペインやイタリアで主に生産されています。
スペイン料理屋さんなどですとおつまみなどで提供されることもありますので、実を食べたことのある方も多いのではないでしょうか?

小豆島産 オリーブ新漬け 100g袋入り (大森屋 季節限定漬物) 

そんなオリーブの種類は以下のような種類があります。

オリーブオイルの種類

・バージンオイル(エクストラバージン)
・生成オリーブオイル
・ピュアオリーブオイル

オリーブオイルの分類

脂肪酸の分類
不飽和脂肪酸
オリーブオイルは以前もご紹介した脂肪酸の分類では不飽和脂肪酸の中で一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)に分類されます。

ω9系脂肪酸
75%以上が一価不飽和脂肪酸で構成されており、オレイン酸の呼び名自体がオリーブオイルから抽出されていることに由来しています。

オリーブオイルの健康への効果と特徴

・酸化しにくい
不飽和脂肪酸の中で一番参加しにくい油です。

・皮膚への刺激が少ない
皮膚への刺激が少ないため化粧品などにも利用されます。

・悪玉コレステロールを取り除く
血中の悪玉コレステロールを減らす作用があるため、心臓病や高血圧の予防に効果があります。

・便秘の解消
オレイン酸の乳化作用により、便秘の解消に役立ちます。
体質によっては下痢の原因になってしまうこともあります。

・高い抗酸化作用
老化や痴呆症・ガンの予防に効果が見られたとする論文が多く発表されています。

オリーブオイルのカロリー

オリーブオイルもその他の油脂と同じくカロリーは1gあたり、約9kcalです。

1日に20g摂取すると約180kcalとなります。

健康のためのサプリのように20gを飲み続けたと仮定すると1ヶ月で約1kgほどの脂肪が増える計算になります。

ダイエット中の方のオリーブオイルの取り方

様々なサイトや書籍、テレビ番組では健康法の一つとしてオリーブオイルを直接飲んだり、普段より多めに加えることを推奨している場合もあります。

先ほどご紹介したオリーブオイルのカロリーの章でも記載しましたが、基本的なカロリーはその他の油脂と同等です。

健康にいいという安心感による「追いオリーブオイル」や「飲みすぎ」は、今までの食生活を変えずに運動量にも変化をせずに摂り過ぎると、最終的に余ったカロリーはいずれ脂肪へと変化します。

食事のバランスもダイエットには大切ですが、油の種類にも気を使うと効果的です。

飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の比率が3 :4 : 3であることが望ましいとされています。欧米では一般に飽和脂肪酸が多く、多価不飽和脂肪酸が少な過ぎるとされますが、日本人の食事は平均すると理想に近い脂肪酸バランスといわれています。

参考・引用:公益財団法人 日本食肉消費総合センター 「SMP比」って何のこと?(www.jmi.or.jp/qanda/bunrui3/q_056.html)

一般的に食用油などから摂る脂質の全体量は50gでその内の30g程度を食材から摂取しています。

炒めものや揚げ物・ドレッシングなどからの脂質は10~20g程度とされています。

この揚げ物や炒めものの油、ドレッシングの代わりに可能な範囲でオリーブオイルに置き換える程度の活用が大切と言えます。