2015年の4月頃から「ココナッツオイルを加えてお米を炊くことでカロリーが半分以下になる」という記事が話題になっています。

5月にはテレビ番組でも紹介されましたので、早速実践してみようと考えている、実践中の方もいらっしゃるかもしれません。

これらの記事やテレビ番組の大元のソースは、スリランカの研究者がアメリカの化学会( American Chemical Society )での報告が元となり、TIMEやワシントン・ポストなどのニュースメディアが取り上げ、それを引用した形となっています。

複数のメディアを経ることで、拡大解釈されていっており、実際に試したところでカロリーを抑える事は難しいのではないかと感じたため、記事化しました。

ココナッツオイルでお米のカロリーを減らす仕組み

その他のサイトにも同様の内容がありますので、ここでは概要のみをご紹介します。

1:炊飯前の研いだお米にココナッツオイルを少し足し(お米の3%)、炊きます。
2:その後、冷蔵庫で12時間以上冷やします。

ココナッツオイルを足すことと、炊飯後のご飯を冷やすことで、お米に含まれるデンプンのうち難消化性デンプンの比率が10倍に増え、体内に吸収されるエネルギー量が減る(体内に取り込まれるカロリーが減る)という研究結果です。

難消化性デンプン(レジスタントスターチ)については次の記事で、その効果などをご紹介したいと思います。

単に冷ご飯にするだけでも難消化性デンプン(レジスタントスターチ)は増えるとされています。
炊飯器によるレジスタントスターチの量の差
図表引用:昭和女子大学 異なる炊飯器を用いた米飯レジスタントスターチ含量の定量

※RSはレジスタントスターチ量、TSは総でんぷん量
※本実験は炊飯法の差により、レジスタントスターチの量が増加するかを確認する目的で行われた試験です。
※兵庫県産のこしひかりを使用。

こちらの研究を元にすると24時間の冷蔵後のレジスタントスターチ量が増えていることが見て取れますが、差は僅かです。

何が問題か?

原文に近いメディア、もしくは原文につきましては本章の最後に参考元を記載します。

簡単に概要をまとめると、以下のようになります。
1:研究時に38種類のお米で試験している
2:それらの種類で10~12%のカロリー減少が確認された
3:試験したお米はスリランカ産(タイ米のようなインディカ米の可能性が高い?)
4:まだ論文にはなっていない?

1と2に関しては38種類のお米の種類に対し、8つの調理法を行い、最も良い結果が出た種類のお米と調理法で50~60%のカロリー減少が見られたと記載があります。

2に関してはThe Wasington Post とAmerican Chemical Societyの動画のみで確認できます。

3:試験したお米はスリランカ産
インディカ米か否か、使用した米の種類の確認はできませんでしたが、スリランカのお米と記載がありますので、インディカ米の可能性があります。

元々日本で食されている短粒種よりもタイ米などのインディカ米はレジスタントスターチの比率が高いとされています。

日本で一般的に食べられているジャポニカ米(いわゆる日本米)を使用した場合に同様の結果とならない可能性があります。
(世界の米生産量のうちジャポニカ米の生産量は15%未満とのことです。参考:wikipedia

お米の種類によるレジスタントスターチ量の差
図表引用:日本食品科学工学会誌 米および米加工品における難消化性澱粉含量の測定

上記論文では国産のお米のレジスタントスターチ量を比較しています。

この様に品種によっても差が確認できます。

4:まだ論文にはなっていない?
引用元をたどると、American Chemical Society(米国化学会)というアメリカの化学分野の学術団体のリリースと研究者のインタビュー動画にたどり着きます。

確認した限りではまだ論文になっておらず、「使ったお米の品種」、「それぞれでどの程度カロリー減少が確認できたのか」が不明でした。

日本のお米を使って、ココナッツオイルを足したところで大したカロリー減少は期待できないのではないかと感じています。(あくまで個人的感想です。)

一番気になる点としては「最もカロリー減少が確認できた場合で50~60%、その他でも10~12%のカロリー減少が確認できた」とあり、「10~12%のカロリー減少が確認できた」と記載している日本のメディアは確認できませんでした。
(海外メディアに関しても、記載のある物、ない物があります。)
(38種の米×8つの調理法を試し、ほとんどが10~12%のカロリー減少で、1~2例で50~60%のカロリー減少が確認できたレベルなのでは?と感じています)

要するに「ココナッツオイルでご飯のカロリー半分!」と言い切るには現時点での研究結果からでは早計ですし、記事を見た日本人がジャポニカ米を使い実践するには不向きな可能性が高いと言えます。

本記事のタイトルに「半分はウソ」と書いた理由はここにあります。
(研究結果に対してウソと言っているのではありません。)

参考:TIME
mail online
The Wasington Post
American Chemical Society

情報の拡散とニーズとしての転化

「ココナッツオイル お米」とGoogleで検索すると、ざっと確認しただけでも50本以上の類似記事が確認できます。

私が確認した範囲ではありますが、これらの記事中に「お米の種類によりけりで結果が異なる」と記載のあるサイトは1つもありませんでした。

おそらく日本で最初に書かれた記事を元に、レシピを実践するなど内容を膨らまして、色々なサイトでも同様の記事が色々なサイトで作られたように感じます。

どの記事も「お米のカロリー半分」、「カロリー50~60%カット」などの記載があります。

今後もNAVERまとめなどのキューレーションメディアなどで記事が増えていくことと思います。

また、Googleなどの検索サイトで対象のキーワードについて、どのくらいの人が調べているかを調べる方法があります。
2-5.png
「ココナッツオイル お米」での検索数は月590回となっています(2015年5月)。
(2015年3月の段階では検索した人は0です)

あくまで私の仮説ですが、

1:たくさんのサイトに載った
2:実践したいと思う人が増えた
3:2の人がレシピを調べたり、効果を確認したいと調べた

このようにして、月間の検索数が増えたのではないかと感じています。

(5月にあったテレビ番組の影響もあると思います。この番組自体がネットで話題だったネタを元に構成された可能性も高そうです。)

検索数などの実数は確実な数字ではなく、おおよその傾向とされていますが、単純にこのキーワードについて調べる人が増えたことは事実かと思います。

ネットメディアの悪い所

インターネットメディアは情報を手軽に取得でき、暇つぶしだけでなく、日々の生活に役立つ情報を得られるなど、有益な面が沢山あると思っています。

当サイト自体もその一員なので全否定は出来ないのですが、先程の「ココナッツオイル+お米」のように何とも言えない情報が最初の記事に続いて、ゾクゾクと類似の記事が出てきます。

そしてそれぞれの記事が、ソーシャルメディアや流行りのキューレーションメディア・アプリ、ニュースアプリに拾われ、何重にも拡散されていき、正しい情報かのように広まっていきます。

完全なるエンタメ情報であればいざ知らず、ダイエットや健康についての情報がこのように拡散されていくことにはデメリットが大きいと言えます。
(最近ではネットで話題になった企画や情報をテレビで後追いすることも多いとも聞きますので、ネットメディアだけに限ったことでは無いとも言えます。)

ココナッツオイルを足してお米のカロリーが抑えられると信じ、実践して今までの2倍お米を食べてしまった人はどうなるのでしょうか?

前出の元情報からしますと、おそらく太るでしょう。
(あくまで、その他の食生活・運動習慣に変化をしていない前提であれば)

今回の情報であれば、太る程度で済む可能性もありますが、情報の内容によっては深刻な健康被害やリスクをもたらす可能性が無いとも言えません。
(中長期的な肥満は様々な疾患のリスクをもたらすので「太るだけ」と言っていいのかは考えものですが…。)

このような状況で、私は「信じて実践した人だけが悪い」と言い切ることができません。

この様に、ことダイエットに関して言えば、あまり最新の情報に左右されすぎないほうが無難だと考えています。

当サイトでは『細心の注意』と『出来る限り正確な情報』をご提供できるように心がけていますが、人体のことに関してや科学的な研究は、研究が進むにつれ『正しいとされてきた事』が『正しくなかった』、『真逆だった』となることも多々あります。

過去の正しかった事がくつがえることは、科学でも医学でも起こりうるとはいえ、ソーシャルメディアなどが発達した現代では、元のソースが論文や研究結果が正しかったとしても、様々なメディアを経由することで拡大解釈や曲解されて伝わりやすくなっている現状があると言えます。

インターネットで知った情報を元に、何か行動を起こそうと思った時は、一度冷静に振り返ったり、元の情報の信頼性などを確認してみることをおすすめします。

ダイエットに関して言えば、「〇〇を食べれば痩せる」を信じるよりも、運動習慣と健康的な食習慣を続けることの方が近道かつ、健康的だと当サイトでは繰り返しお伝えしています。

◆最後に
科学的な検証プロセスなどについては本記事では触れておらず、研究の正しさを検証する目的ではなく、一般ユーザーが情報を得る際に誤解を招く可能性や元の記事から拡大解釈が広がっていく点について述べたいと考え記事にしました。

科学的な検証の度合いや信頼性については以下の画像が参考になると思います。
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画像引用:四国がんセンターホームページ>科学的検証ってどんなこと?
こちらの図では人への治療方法に対しての研究の信頼性について表しています。

詳しくは引用元のページをご覧ください。

STAP細胞の件などを含め、私自身は科学的な検証も人が関わる以上、万全ではないと感じていますが、多くの専門家が検証プロセスに関わる「科学」という手法に信頼を置いています。

自戒を含めて、ある程度のプロセスを踏み、正確性がある程度担保された情報の提供をメディア運営者は心がけるべきでないかと感じています。

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