Line@

先日ご紹介した記事でも少し触れた難消化性でんぷん(レジスタントスターチ/Resistant Starch、RS、耐性でんぷんとも呼ばれます)の働きや効果、そして皆さん気になる冷ご飯ダイエットの効果をご紹介します。

その「ココナッツオイルで炊いたお米でカロリー摂取量を抑えられる?」という過去記事では、一部否定した内容でした。
レジスタントスターチの比率を増やす事で摂取カロリーを押さえたり、整腸作用が期待できる事は確認できました。

同様のワードで検索すると以下の様なタイトルを見かけます。

・冷ご飯を食べればカロリーが減る!
・冷ご飯ならたくさん食べても痩せる!!

ちょっとした工夫で痩せることが出来ると表現されたタイトルが多く見られます。

本当でしょうか??
長めの記事になってしまいましたので、結論をまず記載します。

冷ご飯で増えるレジスタントスターチ量は限定的で、過大なダイエット効果は期待できません要は冷ご飯なら大丈夫!と思って食べ過ぎるとダイエットとは真逆の行為になってしまいます。

本記事では以下の流れでレジスタントスターチとダイエットの関係をご紹介します。

  • でんぷんとは?
  • レジスタントスターチ(RS)の効果
  • 調理方法によりレジスタントスターチを増やすことは出来るのか?

最近話題になっている「ココナッツオイルでお米を炊いた際にカロリーが抑えられるかどうか」についての過去記事は以下からどうぞ!

ココナッツオイルでご飯やお米のカロリー半分減らせるは半分ウソ(と言っても過言ではない…)

澱粉(でんぷん)とは?

レジスタントスターチ(難消化性でんぷん/RS)について解説する前に、でんぷん(starch)についてご紹介します。

生活に身近な商品としては「片栗粉」と言うと伝わりやすいかと思います。

片栗粉は、ユリ科の植物「かたくり」の根っこから作られ、現在一般的に流通している片栗粉はじゃがいもから作られており、唐揚げなどの揚げ物から料理のとろみ付けのために使います。

じゃがいもの他、トウモロコシから作られたコーンスターチ、小麦から作られた小麦澱粉、米は米澱粉、キャッサバから作られたタピオカ、葛(クズ)など直接食べる食材としても活用されます。

でんぷんは食品を安定化したり、発酵時の原料とされるなど、色々な場面でも使われています。

そして、皆さんが日々食べる白米の77%がでんぷんからなります。

人がでんぷんを食べた時に体で起こる消化や吸収は、簡単にまとめると以下の様な流れになります。

でんぷん摂取時の消化吸収の流れ
  • 食べる
  • 唾液の働きでデキストリンやマルトース(麦芽糖)に分解
  • 最終的に小腸でブドウ糖に分解され、吸収される

ここまでは『でんぷんは糖分(ブドウ糖)として体内に吸収され、血糖値の上昇に関わり、最終的に脂肪として蓄積される』とざっくり理解して頂ければと思います。

次の項目では、でんぷんと難消化性でんぷんの差についてご紹介します。

レジスタントスターチとは?

レジスタントスターチ(Resistant Starch)は日本語で『難消化性でんぷん』となります。

現在、広く受け入れられているレジスタントスターチの定義は、

「健康なヒトの小腸内での酵素消化作用を逃れる澱粉および澱粉分解産物の総称」

とあります。
引用:日本食品科学工学会誌 Vol. 57 (2010) No. 5 P 224 難消化性澱粉

前項目でご紹介した、でんぷんに「難消化性」が付いた言葉で、「消化されにくい・されない=吸収されにくい≒摂取カロリー量が抑えられる」となります。

簡単にまとめると、
「お米やパン中のでんぷん(炭水化物)から、難消化性でんぷんの比率が高まれば、摂取カロリー量が抑えられ、血糖値の上昇を抑えられる。」
となります。

レジスタントスターチには1~4までの4つの分類があります。

RS1 細胞壁などで物理的に消化されない 全粒粉,豆類,粗粉砕穀類,パスタ
RS2 澱粉粒自体に耐消化性がある 未熟バナナ澱粉,高アミロース澱粉,未加熱の馬鈴薯澱粉
RS3 老化澱粉 ポテトサラダ,コーンフレーク,冷ご飯
RS4 化工澱粉 架橋澱粉,エーテル澱粉

引用:日本家政学会誌 レジスタントスターチの開発

最初にご紹介した、冷ご飯など、でんぷんを含む食材を冷やしたりすることでカロリーが下がるとしている言説はこの「RS3の老化でんぷん」から来ています。

レジスタントスターチの主な効果
  • 整腸作用
  • 血糖値の上昇を穏やかにする
  • 摂取カロリー量を抑える
  • 満腹感が持続しやすくなる
  • 参考:日本家政学会誌 レジスタントスターチの開発

レジスタントスターチの効果としては上記が挙げられます。

では実生活での工夫で、レジスタントスターチを摂る量を増やし、摂取カロリー量を事は可能なのでしょうか?

レジスタントスターチを調理方法などで増やすことは可能?

以前の記事「ココナッツオイルで炊いたお米でカロリー摂取量を抑えられる?」でもご紹介したのですが、調理方法などでレジスタントスターチ量を増やすこと自体は可能そうです。

炊飯器によるレジスタントスターチの量の差
図表引用:昭和女子大学 異なる炊飯器を用いた米飯レジスタントスターチ含量の定量
※RSはレジスタントスターチ量、TSは総でんぷん量
※本実験は炊飯法の差により、レジスタントスターチの量が増加するかを確認する目的で行われた試験です。
※使用されたお米は国産のコシヒカリです。

上記研究では炊飯直後のお米と4℃で24時間の冷蔵保存後のお米中のレジスタントスターチ(RS)量の比較を行っています。
こちらの研究を元にすると24時間の冷蔵後のレジスタントスターチ(RS)量が増えていることが見て取れます。

ですが差はとても僅かです……。
平均値で見ると米粉中レジスタントスターチ(RS)量は、炊飯直後で2.3%± 0.2%、24時間の冷蔵保存後で2.6%± 0.4%という結果です。
炊飯直後のお米と24時間の冷蔵保存後のレジスタントスターチ量の増加は約13%程度となります。

炊飯直後の100gのお米にレジスタントスターチ量は1.2g程度とされています(wikipediaより)。
仮に先程の研究データと同じく13%増加したとすると冷ご飯100gで約1.35gのレジスタントスターチ量になります。

以上をまとめると冷ご飯や作り置きしたおにぎりで摂取カロリー量を減らしたりすることは、可能ではありますが、差は微量だと言えます。その他の論文なども探しましたが、日本米で冷ご飯を作り、日常生活において有意な差が出るほど、レジスタントスターチ量が増えたという結果は見当たりませんでした。

レジスタントスターチの比率を高める努力をするよりも

冷ご飯を作ったところで、レジスタントスターチ量が大きく増える訳ではありません。

前回の記事でご紹介したココナッツオイルを足すなどの調理方法を変えた際に、レジスタントスターチ量が増え、カロリー摂取量を抑えることが出来るかというと、現状では不透明だと結論づけました。

そちらでも記載しましたが、タイ米など元々レジスタントスターチの比率が高く、調理方法などにより、差が出る可能性はまだあります。先ほどの日本家政学会誌にも記載がありますが、無理にレジスタントスターチ量を増やした食事メニューを考えたり、調理方法を考えることで、逆効果の可能性もあります。

前述の通り一般食品に含まれているレジスタントスターチは僅かであり,日常の食事でこれを十分に摂取しようとすれば多量の澱粉質を取ることになり,かえってカロリー過多になりかねない.

引用:日本家政学会誌 レジスタントスターチの開発

冷ご飯を食べるなどの工夫でレジスタントスターチ量を増やせたとしても、その量は僅かで、多少食べる量を増やしただけで帳消しとなってしまうレベルだと言えます。

また、2014年末頃から特保の認定を受けた難消化性再結晶アミロースというレジスタントスターチの一種を含んだ商品(特食パン)がローソンなどから発売されています。
(私が確認した東京都内の数店舗では、特食パンの実売を確認できませんでした。)
(糖質を押さえた難消化デキストリンを含む商品はかなりの数が提供されていました。)

数十グラムのパンの全体量のうち、レジスタントスターチ量は数グラムと、これらの商品でも全体の総でんぷん量から考えると僅かです。

また、タイ米(長粒種)や全粒粉のパンなどもレジスタントスターチは含まれますが、全体量からすると数%です。

<レジスタントスターチを含む食品>

含量の区分 乾燥物中の重量% 食品の例
含量がかなり低いもの <<1 ゆでたじゃがいも(調理直後),炊飯米(炊きたて),パスタ,ふすま含量の高い朝食シリアル,小麦粉
含量が低いもの 1~2.5 朝食シリアル,ビスケット,パン,パスタ(冷めたもの),炊飯米(冷めたもの)
含量が中程度のもの 2.5~5.0 朝食シリアル(コーンフレーク,ライスクリスプ),フライドポテト,エクストルーダー処理した豆類
含量が高いもの 5~15 えんどう,生米,オートクレーブ後冷ましたデンプン類(小麦,じゃがいも,とうもろこし),調理し冷凍したデンプン含有食品
含量が非常に高いもの >15 生のじゃがいも,生の豆類,アミロース含量の高いトウモロコシ,未完熟のバナナ,老化したデンプン

引用:食物繊維−基礎と応用−(第3版) P52 種々の食品に含まれるRS含量 表4-7

含量の高い食品例として以下は、食べれない、もしくは食べると体に不調をもたらす食品です。
・生米・生のじゃがいも・豆類、未完熟のバナナなど

その他の一般的な食材に含まれるレジスタントスターチの量は、多くとも数%とカロリー摂取量を減らすという目的では有用とまで言える含有量ではありません。そして、冷ご飯と炊きたてのご飯における、レジスタントスターチ量もさしたる差があるとは言えません。

以上を総合的に考えると、レジスタントスターチ量を増やす事を意識するあまり、冷ご飯を意識的に食べたり、ココナッツオイルを足してご飯を炊くなどして味を落としてしまい、食事の満足感や楽しさを失ってしまったり、安心感から食べ過ぎてしまう可能性を考えると、食事全体の炭水化物の量を抑える努力をした方がシンプルだと感じます。

前回のココナッツオイルご飯の記事と同じく、冷ご飯には、多少のカロリーを抑える効果や健康効果は期待できますが、その減少量は限定的、という結論となります。

関連記事