腸腰筋のストレッチ方法と腸腰筋の働きや緊張の理由をプロが徹底解説
腸腰筋の働きからほぐすためのストレッチ方法をプロのトレーナーが徹底解説!
記事の前半では腸腰筋の働きから、腸腰筋が緊張する理由、そして緊張による悪影響を解説します。後半から実践編のストレッチ方法をご紹介しています。
腸腰筋の働きとは?
腸腰筋には4つの重要な働きがあります。身体の深い部分にあるので動きが見えず、どのような機能があるかわかりにくいですが非常に大きな役割を持っている筋肉です。スポーツをする方だけではなく、一般の方も必ず知っていて欲しい部分です。
※図中の大腰筋と腸骨筋を合わせた総称を腸腰筋と呼びます。
1)股関節の屈曲
腸腰筋が収縮すると、股関節が曲がり膝がお腹の方へ引き寄せられます。いわゆるもも上げをするときに必要な筋肉です。走ったり歩いたり出来るのはこの筋肉が働き、足を持ち上げてくれます。
他にもサッカーボールを蹴る、空手の蹴り、バレエで足を上げるなど、股関節を曲げる動作は全てこの腸腰筋が関わっています。特に瞬発力に恵まれている黒人アスリートはこの腸腰筋が日本人よりも遥かに発達していることがわかっています。また、反対にお年寄りなどが小さな段差に躓きやすいのはこの腸腰筋が弱っている事が大きく関係しています。
2)股関節の外旋
腸腰筋の起始停止(筋肉と骨の付着部分)の構造上、股関節を外旋する働きがあります。股関節を起点につま先を外側へ向ける事が出来ます。
バレエダンサーの行うプリエやお相撲さんの四股などの動きをするときに働く筋肉です。普段からガニ股の人はもしかしたら腸腰筋を使いすぎているかもしれませんね。
3)股関節の内転
足を身体の中心へ引き寄せる内転をする働きがあります。簡単にいうと足を閉じる動作です。足を閉じてボールなどを挟み、スクイーズするような運動やエクササイズは腸腰筋が手助けしています。ただ、股関節の内転に関して腸腰筋は補助的な役割をもっているだけで、股関節の内転のメインの筋肉ではありません。
4)骨盤の引き上げ
腸腰筋(腸骨筋+大腰筋=腸腰筋)の大腰筋は胸椎の12番~腰椎の5番が起始で停止部が大腿骨小転子です。なので、骨盤を引き上げる働きがあります。骨盤を引き上げるといってもわかりにくいので、地面に座ってお尻歩きをするイメージしてください。
お尻を交互に引き上げながら前に進んでいきますよね。このような動きをするのが腸腰筋の働きです。
腸腰筋が緊張する3つの理由
腸腰筋が緊張する理由はいくつかあります。生活に潜む腸腰筋が緊張する理由。少しずつ紐解いていきましょう。
腸腰筋の過緊張の原因:1オーバーユース(使いすぎ)
使いすぎです。腸腰筋には4つの働きがあると先程述べましたが、これらの動きをやりすぎてしまうと常に緊張している状態が続き、過緊張になってしまいます。走ったり階段を登ったりと股関節を沢山使う動きをしている方は腸腰筋のオーバーユースになりがちです。オーバーユースの場合はストレッチや適切な休息が必要となります。
腸腰筋の過緊張の原因:2姿勢が悪い
姿勢が悪いと自然と腸腰筋が短縮したままになってしまいます。緊張とは少し違いますが、身体に及ぼす影響は似ています。短縮すると骨盤が前傾になりがちに。あなたの骨盤は前傾していませんか?
腸腰筋の過緊張の原因:3他の部位をかばっている
皆さん個々に身体の状態は異なりますので、一概にどこの筋肉をかばっているかは断定出来ませんが、他の部位がうまく機能していないがためにその代償として腸腰筋に負担がかかる場合です。
腸腰筋が緊張している事に気付くのは意外に難しいことです。身体の奥深くにある筋肉であるがゆえに、使っている感覚もなければ疲れている感覚もなかなか感じれません。
腸腰筋が緊張するとどうなるのか?
腸腰筋が硬くなってしまうとどうなるのでしょう? 良く言われているのは腸腰筋と腰痛の関係性です。これは腸腰筋が強すぎて骨盤が前傾してしまい、背骨の適切なアーチが形成できずに腰痛を起こすパターン。そして腸腰筋が弱っているがために腰を上手くサポート出来ず、痛みが生じてしまうというものです。結果として
- 股関節痛
- 椎間板へのダメージ
- 腰の張り
- 足の長さが合わなくなる
- 体幹が安定しなくなる
- 腰の柔軟性が失われる
などの症状が起きる場合があります。
腸腰筋の緊張を簡単にチェックする方法
腸腰筋が緊張/短縮しているか簡単にチェックする方法があります。これからご紹介するチェック方法で、2つとも当てはまれば腸腰筋が緊張/短縮している可能性がとても高いと言えます。
①トーマステスト:腸腰筋の緊張チェック
- 仰向けに寝ます
- マッサージテーブルなど、少し高さのある台に寝ましょう
- 両膝を曲げて膝に抱え込みます
- 片膝は両手で押さえたまま、反対の足を伸ばしていきましょう
この時、図では右足の太ももの裏(ハムストリングス)が、地面に付きますか?
つかなければ、今度は下ろした足の膝を伸ばして見て下さい。それでもつかなければ腸腰筋が緊張/短縮していると可能性が高いです。
反対の足も同様にしてチェックして左右の差を比べたり、不快感がある方を見つけてみてください。
②足の開き具合をチェック:腸腰筋の緊張度合い
- 仰向けに寝て全身の力を抜きましょう
- 足元の方を見てみて下さい
両足の開き具合はどうなっていますか? どちらかより外向きに開いていませんか?もし開いている方があるとすれば、そちらが腸腰筋が緊張/短縮している可能性があります。
✔膝裏が伸びない
✔つま先が開いている
この二点が当てはまると、その足と同側の腸腰筋が緊張している可能性がとても高くなります。ストレッチをする前に自分の状態をチェックしておくと、ストレッチの効果が把握できるためお勧めです。
腸腰筋をストレッチする効果
身体の中心部にあるがゆえに様々な影響を及ぼす腸腰筋をメンテナンスするためにはストレッチが効果的です。腸腰筋および大腰筋は背骨と大腿骨を繋いでおり、腸腰筋が緊張して固まってしまうと身体全体のバランスに影響を及ぼします。
腸腰筋をストレッチすることで以下のような効果が得られます。
- 身体の全体のバランスの調整
- ももの引き上げが楽に出来るようになる
- 腰痛を緩和する
- 足の長さが揃う
- 背骨のアーチが整い、姿勢が良くなる
※注意:1~5の状態の原因が腸腰筋に起因していた場合に改善できる可能性のある効果です。腸腰筋のストレッチが必ずこれらの症状の改善に繋がるという訳ではなく、腸腰筋の緊張に起因した状態の場合に効果が出る可能性があるという解釈でお試しください。
腸腰筋のストレッチの実践前の注意点
✔最も注意したい腸腰筋ストレッチ時の注意点:骨盤の前傾
腸腰筋ストレッチをする際に一番起こる間違いは、腸腰筋や大腿四頭筋などをストレッチすることで骨盤が前傾して反ってしまうことです。逆に腰の椎間板を圧迫してしまいもともとあった症状を悪化させたり新たに痛みが生じる場合もあります。正しい骨盤の位置をキープしながらストレッチをすることが重要です。
正しい骨盤の位置というのは、骨盤がニュートラルの状態。前傾も後傾もしてない状態です。以下の写真を見てみましょう。
上のようにストレッチをすることによって反り腰になってしまっているのがわかるかと思います。
1)片膝をついての腸腰筋ストレッチ
①まずは片膝を地面につきます。膝にタオルやクッションなどがあるとに膝が痛くありません
②体幹部は動作中常に地面と垂直に維持するようにします
③両手を前の膝にあてて重心を前方へシフトしていきます
④この時に太ももの前側よりも、股関節の前部が伸びていることを確認してください
⑤重心を前にシフトすればするほど股関節の前部がストレッチされます
⑥この時に、反り腰にならないよう仙骨を手で抑えるのもいいでしょう
⑦10~30秒ホールドしてそれを3セット行います
2)片膝をついての腸腰筋ストレッチ+腕伸ばし
①先程の腸腰筋ストレッチとほぼ同じです
②重心を前方へシフトさせます
③骨盤が前傾していないことを確認したら、伸ばしいてるサイドと同側の腕を天井へ向かって高く伸ばしましょう
④手を伸ばした時に反り腰にならないよう注意します
3)片膝をついての腸腰筋ストレッチ+足捻り
①先程の腸腰筋ストレッチをします
②膝をついている方の足を少し外側へとずらしていきます
③骨盤は変わらず正面を向いているように気をつけましょう
立ったまま出来る腸腰筋ストレッチ
ストレッチをしたいからと言っていつでも膝を立てたり寝たり出来る出来るわけではありませんよね。立ったままストレッチが出来るうような方法もご紹介します。
1)ランジストレッチ
①背筋を伸ばしたまま片足を前に出します
②アキレス腱のストレッチの様に、後ろ足をピンと伸ばします
③後ろ足側の股関節の前側が伸びるように体重を前にシフトしてみましょう
※この腸腰筋のランジストレッチは、背筋を地面と垂直に伸ばしたまま(図の赤線)、体を前方にゆっくり押し出し(図中:赤の矢印)、股関節の前部(図中の黄色の箇所)が伸びている事を意識しながら行いましょう。伸びている箇所のしっかりと意識することが大切なストレッチ方法です。
2)つま先内向け+体側ストレッチ
①姿勢よく直立します
②股関節から片足を内捻り(股関節内旋)してつま先を内側へ向けましょう(図中:赤の矢印)
③足を内捻りしたときに骨盤が回ってしまわないよう、おへそは正面を向くようにしましょう(図中:黄色の矢印)
④足を内捻りした側の体側が伸びるように、身体を横へと傾けましょう
腸腰筋と太もも周辺をストレッチ
腸腰筋をストレッチするためには股関節の前側をストレッチしたり、足を捻ったりしないといけませんが、大腿四頭筋や内転筋、臀筋群(お尻の筋肉たち)が硬すぎると腸腰筋を上手くストレッチ出来ない場合があります。ですので、腸腰筋をストレッチするだけでなく周りの筋肉もストレッチしておきましょう
1)股割り
①座って足を広げます
②両手は身体の後ろへおいて支えにしましょう
③骨盤を立てて、股関節から曲がるように身体を前へ倒していきます
④太ももの内側が伸びるのを確かめながらゆっくりと伸ばしましょう
※股割りと聞くと相撲の稽古の様に無理に股関節を開き、更には人の力を借りてグイグイと押し込むストレッチを意識する方も多いかもしれませんが、無理は禁物です。可能な範囲で股を開き図のように身体をできる範囲で前傾させ、徐々にストレッチに慣らしていきましょう。
2)相撲スクワット
相撲スクワットをすることで股関節周りをストレッチをすることが出来ます
①立った状態で足を広く広げて膝とつま先を外側へ向けます
②背筋は起こしたままでそのままお尻を落としていきます
③股関節の付け根や内側がストレッチを感じれば正解です
3)大腿四頭筋のストレッチ
①うつ伏せになります
②片膝だけを曲げて踵をお尻へ近づけるように引き寄せます
③柔軟性が足りない方は膝を曲げるにつれて腰が反ってくることがあるので、腰が反ってつまらないように注意してください
腸腰筋に優しい生活をする方法
腸腰筋は姿勢維持もそうですし運動機能的にも大事な筋肉ですね。そんな筋肉をいたわってあげるにはどうしたらいいのでしょうか?
1)長時間座ったままでいない
もしお仕事で長時間座らないといけない場合はこまめに立ち上がって身体をほぐしましょう。同じ姿勢を続けてしまうと身体が固まりやすくなり、腸腰筋も例外ではありません。
2)過度なエクササイズは避けて休みを取る
長距離ランナーやスプリンターのように股関節を酷使するスポーツをしている方は股関節に違和感を感じたら必ずおやすみをいれましょう。腹筋運動を沢山する方も腸腰筋に負担をかけますのでやりすぎないよう気をつけます。
3)プロにマッサージをしてもらう
プロの方に施術して頂くとメンテナンスに非常に役に立ちます。身体全体がほぐれて緩んでいれば、全体のバランスがよくなり円滑に動くので腸腰筋への負担もなくなります。
4)ストレッチや適度な運動を続ける
ストレッチは自己メンテナンスをする簡単な方法です。この記事でご紹介したストレッチをお時間のある時に続けて下さい。そして腸腰筋だけではなく、全身をまんべんなくストレッチするのが重要です。ヨガやラジオ体操など、ストレッチ要素を含んだ運動をしましょう。一日20分、テレビを見ながらでもいいので続けていくと効果が出ます。
腸腰筋のストレッチ方法を沢山お伝えしました!腸腰筋のストレッチをするためにはその他の筋肉もストレッチしてからのほうが効果的だということもおわかり頂けたと思います。
<著者プロフィール>
今田悠太
ロサンゼルスを中心に活動する、パフォーマンスコーチ。
卒業大学:カリフォルニア州立大学ロングビーチ校
専攻:キネシオロジー
経歴:
09-現在 アメリカ独立プロバスケットボールリーグ:ヘッドストレングスコーチ
07-14アメリカのスポーツ研修関係のツアーの通訳
09-現在パーソナル・パフォーマンスコーチ
<理念>
一般の男性、女性のフィットネスの指導から、人種問わず世界で活躍する プロアスリートまで幅広く指導。日米の長所を組み合わせた、身体の軸を意識した独自のトレーニングメソッドで、今までになかったトレーニング理論を作り上げ、リハビリからパフォーマンストレーニング(競技力向上)を行う。 世界には眠っている才能が多くあると感じ、少しでも個人の才能が表に出るきっかけになればいいという思いから”RISE”というグループを立ち上げる。 人と人の繋がりの中で才能が開花していくのを助け合いたいと願い、日々奮闘中。
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