糖質制限とカロリー制限の是非について

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2018年6月1日

糖質制限ダイエットの是非〜人が太ることについての残酷な真実〜(参照:blog.skky.jp/entry/2015/09/17/224100 /SSL非対応ページのため、リンク削除いたしました。)

今日話題になっていた、記事を見て、カロリーの収支などについて、ちょっとな〜と思ったので記事にしてみます。

前提として、私自身は糖質制限主義者、カロリー計算絶対主義者ではありません。

*本記事はブログ主さんを否定するという目的ではなく、部分的に誤解を招くであろう点が多いと感じたため筆を取りました。また、原著は読んでません。

たぶん本記事の構成上、↑の記事を見ていないと分かりづらいと思います。
もしご興味あるけど、結論だけ!という方はこちらから結論へお進みください!

太るメカニズムは物理学でなく、生理学。ただカロリー計算も無駄ではない

つまり、人体はまだ物理学的な考えを適用すべきではなく、生理学で捉えるべきなのだ。

これには同意です。

そもそもカロリーの算出方法は、「食物のカロリー」と「運動による消費カロリー」で異なります。
消化・吸収・代謝には個人差があり、カロリーを減らす=マイナス◯kgとはならない。

最近の研究では腸内環境がエネルギー吸収に関係しているとする説もあります。

食物は食べたあと、1:消化⇒2:吸収⇒3:代謝の流れをたどります。

これらの1~3の全てで個人差があります。

例えば、
1:消化不良を起こしていれば、摂ったエネルギーから吸収量は減る。
2:吸収が何らかの要因で悪ければそのまま排泄される。
3:代謝が上手く行かない遺伝的な要因や病気もあり、太りやすさには差があります。

※あくまで例示です。
(3の例示としてはインスリン抵抗性、脂質代謝が上手く行かない遺伝的要因 などなど)

これらを総合的に考えると「カロリー計算・カロリー収支」を万人に当てはまる「厳格な足し算・引き算」のように使うことは難しいと言えます。

ただ、、、
ただですね!!

厳格な足し引きで使うことは出来なくとも、おおまかなメジャーとしては使えます。
これは後ほど記載します。

前置きはここまでとしまして、誤解を招きそうなブログ主さんの論点をまとめます。

>実証実験が難しいからこそ、健康とか栄養学みたいなものは迷信が生まれやすい領域だ。

そうですね。

迷信というかトンデモ科学と言うか、色々ありますよね…。
EM菌や小保方さんしかり。

ただ今回のブログ主さんの記事構成の一番の論拠としている部分は以下だと思います。

炭水化物を摂らなければタンパク質と脂質をいくら食べても太らない! だってインスリンが出てこないんだから! ……というのが糖質制限ダイエット(炭水化物抜きダイエット)の簡単な主旨。

<要点をまとめると>
1:タンパク質と脂質はいくら食べても太らない
 =2:インスリンが出ないから
 =3炭水化物はインスリンが過剰に出る(出やすい)
  =4:エネルギー収支を元にした考え方は迷信じみている

1~3のインスリン分泌に炭水化物以外の栄養素(ここでは脂質、蛋白質)が寄与するか、否かは異論や様々な研究がある事をご留意頂きたいと思います。

<例示>

糖質は100%血糖値上昇につながり、膵臓からインスリン分泌を刺激するが、たんぱく質は約50%、脂質は10%未満しか血糖上昇には寄与しない

低炭水化物食の肥満と脂質代謝改善効果
Combining protein and carbohydrate increases postprandial insulin levels but does not improve glucose response in patients with type 2 diabetes.

そして「4:エネルギー収支を元にした考え方は迷信じみている」その論拠として語られていることは「木下ゆうかさん」の摂取カロリーについてです。

木下ゆうかさんを例に出すのは…。

エネルギーバランスの考えを採用するなら、大食いで人気YouTuberになった木下ゆうかさんは相撲取り以上のデブでなければならない。

ブコメでもツッコミがありましたが、彼女を太りにくい体質例として出すのは極端すぎる例で、適切ではないと言えます。

・吐いている可能性(そもそも摂取していない)
・胃下垂などの可能性(消化不良のまま排泄の可能性)

(もちろん太りにくい体質の可能性もありますが…。)

多量に食べたところで、吐いたらそれは摂取したカロリー自体なかったことになります。

また、胃下垂は消化不良により、栄養が十分に吸収されない可能性が指摘されています。
(胃下垂の場合は逆に太る人がいることもあります。)

※彼女が太りにくい体質だったとしても、エネルギー収支の例示として、彼女を出すことは適切で無いと言えます。

あくまで、生理”学”・物理”学”として、彼女の摂取カロリー量と痩せている体型を結びつけ、エネルギーバランスの収支が「迷信じみている」とするには無理があるかと思います。

ブーメラン帰ってきてますよ!!
はてな風に言えば、手斧自分に刺さってますよ! ですか??
アイコンは、そういう意味ですか、そうですか。
(ちょっと調子に乗りました。ごめんなさい。)
(※いや、原著にはこれらに対する反論の記載があるのかもしれませんが。)

炭水化物を食べ続けることで、インスリンが脂肪を取り込み続け、また「太れ」という命令を出し続けてしまう、これは一種のバグのようなものとさえ言えるかもしれない。
[中略] 農耕が始まったのは、人類の歴史の最後の0.5%であり、僕達の遺伝子形成に重要な影響を与えたとは考えにくい。だから人間は炭水化物を大量に摂取することに慣れていない。現代の高カロリーの食事や動かない生活で人が怠惰になっているようわけではなく、炭水化物に適応できない人が多いのだ。そして、炭水化物による肥満は、外側から見れば、あるいは当人にさえ、怠惰の結果のように映ってしまう。

ここにも異論があります。
バグではなく、そもそも人類は太ることを「一つの生命維持装置」として組み込まれているとした方が適切だと思います。

脂肪はエネルギーの貯蔵庫であり、飢餓に備えるための仕組みであり、「太りやすい体質自体」が遺伝的には優位だった可能性が高いと言えます。

そもそも飽食の時代が始まったのは100年も経っていません。
(日本で言えば戦後のここ40~50年くらい)

飽食の時代を迎え、過度なエネルギー摂取や適切でないバランスの栄養摂取により肥満となり、肥満が病気や寿命との因果関係があることがクローズアップされてきたというのが、適切なな見方ではないでしょうか。

そもそも日本のエネルギーバランスから話をするのであれば、農水省や厚生省などが公表しているPFCバランス(P:蛋白質・F:脂質・C:炭水化物の摂取比率)の年次の変化などを見たほうが良いかと思います。

Img 0Img002 2Img002 1国民栄養 thumb 400x287 110

<図表引用元>
https://blogs.yahoo.co.jp/bhaloo0228305279/11433771.html
//yazuken.com/interview/no002.html
https://juntan.net/blog/cat7/post-12.html

むしろ炭水化物の摂取量は減っており、圧倒的に動物性タンパク質と脂質が増えています。

*別の話にはなりますが事前に記載
総摂取カロリーも減ってるじゃないか!という見方もできます。
(最後の図)

このデータですが、男女の構成比がないんですよね…。
(しっかり探すか、厚生労働省の「国民栄養調査」などを元にプロットすれば作成できますが、時間足らずで……。)

//www.nissui.co.jp/academy/eating/04/eating_vol04.pdf
男女別のBMIを見ることで合点が行くと思います。
摂取カロリー量の減少は女性がある程度押し下げているといえます。

また、摂取カロリー量の減少は男性でも多少見られます。

そして、カロリー摂取量は減りつつも男性では肥満人口は増えていることと、先ほどの脂質摂取が増えていることから判断すると、どちらかと言えば食の欧米化(脂質の高いファーストフードなど)の方が肥満には影響していると考えられます。

その他にも「炭水化物主体の食事」でも「脂質主体の食生活」でも中長期的には差は無いとする研究もあります。

<例示>
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7598063
nature.berkeley.edu/hellerstein-lab/pdfs/grunnet.pdf

低炭水化物食の肥満と脂質代謝改善効果

これらを総合的に勘案しますと、
「脂質や動物性蛋白質の多い、欧米化した食生活の方が日本人(特に男性)には影響が出ていそう」
「女性はそもそも摂取カロリーを抑えており、痩せていっている」

と言えます。

木下さんが新人類で、カロリー過多や肥満で病気になってしまう旧人類(私たち)から進化した、いくら食べても太らないという飽食の現代人の申し子の可能性もゼロでは無いと思いますし、好きな物を好きなだけ食べられる彼女を羨ましいと思わないでもないです。(ただ、食費どーすんだとかもありますが…。)

ベースが国の栄養調査なので陰謀論……、止めましょう。

摂取カロリーと消費カロリーを太らないために役立てるには?

記事前半にも「カロリー収支は厳格な足し算・引き算」と記載しましたが、厳格に足し引きをせずとも太らない生活にするためにある一定は有用です。

そして、日本人の統計データを見る限り、カロリー過多や動物性の脂質や動物性蛋白質が増えることで太る傾向は見て取れます。

そのため、カロリー摂取量と消費量を、厳格に足し引きすることは無理でも、ある程度減らすことで痩せる方向に優位に働くことは間違いないと思います。
(ベストな対策としてはPFCバランスまで確認し、脂質や蛋白質のバランスも調整できたほうが太りにくいといえます。)
(炭水化物を摂らないことが太らないに繋がる根拠よりは正しい可能性が高いと言えます。)

先程の栄養バランスの悪化を今回根拠としましたが、いくつもの研究で「カロリー摂取量」と「BMI(体重)」との相関性が実証されている例多々あります。

そして運動の健康面・ダイエットへのプラスの働きは数多くの研究でも実証されています。

<例示>
ごめんなさい、ご要望等あれば後日追記します。

※ただし激しい有酸素運動などは食欲にもつながるので、確実に痩せるとは言えません。

無理のない範囲で、食事全体のカロリーを抑えつつ、軽めの運動を継続することが太りにくい生活習慣だと判断しています。
(脂質などを摂り過ぎていないかも注意が必要)

食事全体のカロリーを抑える方法との一つとして、私自身炭水化物を2~3割減らし、野菜や魚中心のエネルギー摂取に置き換えることは、太らないためにとても有効だと感じています。

なので私自身は
「ざっくりカロリー抑え」かつ「軽めの糖質オフ」なら有効だと判断しています。

結論

1:「炭水化物を食べると太る・太りやすい可能性はある」
血糖値の上昇、インスリンの分泌に大きく関与し、太りやすくなる可能性はある。

2:カロリーの収支を把握し、意識して生活改善することは役立つ。
ただし、細かい計算をするのは面倒、かつ100%正確ではありません。
(摂取したカロリーをプラスして、消費したカロリーをマイナスした、足し算引き算だけで痩せるわけではない。)

3:太りやすさには個人差が明確にある

4:運動は太らないためだけでなく、健康維持にも必要。

5:痩せるためにはカロリーをバランスよく、適度に抑えつつ、運動。

多くの人に見てもらう内容として、危機感を煽るよりも、太りやすい体質は存在しますが、食生活の改善と運動習慣は大切ですので、前向きに考えれば無理ない範囲で実践しましょう!がベターでは無いでしょうか?